スポーツ 男子新体操全国オンライン選手権 2021,10,15

今年も大盛況! 男子新体操オンライン選手権を振り返る②

男子新体操全国オンライン選手権2021

大会後半には、今年のインターハイ男子団体のTOP3が登場してきた。
まず、3月の高校選抜で優勝、インターハイ準優勝の神埼清明高校。
超高校級のタンブリング力を誇る神埼清明のメンバーには、昨年のオンライン選手権で神埼ジュニアのキャプテンとして出場し、「全日本ジュニアで3連覇したかったけど、この試合で優勝できてよかった」と男泣きした浅田匠選手が入っていた。まだ高校1年生ながらしっかり名門・神埼清明のレギュラーの座を獲得。1年前よりかなり身長がのびたようには見えるが、チームの中では一番小柄でもちろん身体能力も高いため、「タマ(組みでの跳ぶ役)」として大活躍だ。

神埼清明の演技には、大きな綻びはなく、いつも通りタンブリングも強かった。男子新体操団体ではミスの出やすい鹿倒立では、揃い方から静止の長さまで申し分なく、解説の山田小太郎氏からも「完璧!」という言葉がもれるほどだった。しかし、惜しむらくは、神埼の一番の強みである高さとスピードのあるタンブリングの威力が、オンラインの画面越しではやや落ちて見えてしまったように感じた。インターハイでの惜敗を覆そうという意気込みもあったはずだが、そういった「気迫」や「空気」はオンラインでは伝わりにくい。観客にとってもそうだが、オンライン選手権では審判も演技を目の前で見るのではない。神埼清明の得点は、構成4.5875(10点満点換算では9.175)、実施は8.700。インターハイでは校正9.250、実施8.800だったことを思うと、少し落としてしまったことになる。8月~9月にかけて活動自粛期間もあったことの影響もあるだろうが、オンラインでは、神埼清明の強みが生かし切れなかった結果のようにも思う。

一方で、5番目に登場した盛岡市立高校は、2010年以来というインターハイ表彰台のりを果たしたインターハイでの名演を見事に再現して見せた。盛岡市立高校の選手たちは、ほとんどが地元の滝沢南中学の新体操部出身だ。滝沢南中学は、2007年には全日本ジュニアで団体優勝したこともあるジュニアの強豪校だったが、近年は全国にジュニアクラブが台頭してきたあおりを受け、全日本ジュニアで上位に入ることが難しくなってきていた。
現在の高校生たちがジュニアだった2019年は9位、2018年は13位。たしかに彼らのジュニア時代は、全国の頂点を目指して練習してきているジュニア選手たちとはやや差がある、という印象だったのだ。

そこからわずか2年でよくぞここまで、と思う進化を今年の盛岡市立高校は見せてくれた。ジュニア時代には少し弱いように見えた、つま先や膝までしっかりと意識した動きが見えるようになり、持ち味である独特な振りや、同調性が際立って見えるようになったのだ。こうなれば、中学時代から(あるいは小学生のころから)一緒に育ってきている選手たちの動きの同質性は生きる。まさに「息の合った」「一体感のある」演技をインターハイぜ環境でもあまり損なわれることがなく、インターハイでの3位はフロックではなかったと証明できたように思う。藤原大貴監督は、「現在のメンバーは、ジュニア時代は、強豪チームには太刀打ちできなかったという思いがあり、自信がない選手たち」だと言う。しかし、その自信のなさゆえに、助言を素直に聞き、努力する姿勢を持っていたのだそうだ。高校の3年間で人は大きく変われる。今の盛岡市立はそう教えてくれるチームになった。オンライン選手権での得点は、構成4.425、実施7.800。この時点で神埼清明に次いで2位につけた。

神埼清明がインターハイの雪辱を果たせるか。
最終演技者の井原高校の演技に懸かる、という展開となった。

インターハイでの井原の演技は、「過去最高」かと言われた2019年をも凌駕する作品力と完成度だった。それをそのまま再現できれば、おそらく井原の優勝だろう、と多くの人が予想していたのではないかと思う。
が、男子新体操観戦歴が少し長い人ならば、井原は、意外と「毎回ノーミス」が出ないチームだということもわかっていたはずだ。過去の井原は、そのときのメンバーの限界ギリギリの演技構成で挑んでくるチームだった。だからこそ、その演技が通れば圧倒的なものになり、優勝も勝ち取ってきたが、じつは本番でのミスは少なくないチームだったのだ。
インターハイでの演技が素晴らしかっただけに、見るほうのハードルも上がっている中で果たして井原が自分たちの力を出しきることができるのか? 不安があるとしたらそこだけだった。

結果、その不安は杞憂に終わった。
オンライン選手権での井原の演技も、インターハイに劣らぬ完成度で、その魅力はオンラインでもしっかり伝わってきた。もちろん、井原の演技も生で見ればより心を動かすものだろうとは思う。が、男子離れした柔軟性と随所に織り込まれた魅力的な振り、流れるような隊形移動などは、オンラインで画面越しに見てもその良さが伝わりやすかった。
井原高校の演技は、YouTubeなどを通じて海外にも多くのファンがいる。かねてより「世界中の人に演技を見てほしい」という思いを強くもっていた長田京大監督は、もしかしたらそういう「動画でしか見られない観客の視線」も意識して演技構成を考えているのではないか、とオンライン選手権を見ながら改めて感じた。もしもそうだとしたら、井原の優勝は、能力や努力だけでなく戦略的な勝利だったと言えるかもしれない。

そして、インターハイ、オンライン選手権とミスする気配すらなく、これほどの作品を演じ切った彼らはもしかして、「ギリギリの演技構成」ではなく、ゆとりをもっているのではないか、という気すらしてきた。だとしたら、11月26~28日に行われる全日本新体操選手権では、全日本インカレで20連覇を達成した団体王者・青森大学を相手に、ジャイアントキリングもあり得る? そんな予感もする圧巻の演技だった。

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