スポーツ 男子新体操全国オンライン選手権 2021,10,17

2021男子新体操オンライン選手権を彩ったエキシビションをプレイバック!

男子新体操全国オンライン選手権2021

今年7月からの新型コロナ感染者の急増により、多くの学校が部活中止、活動自粛などに追い込まれ、オンライン選手権の出場さえも叶わなくなってしまった。しかし、エキシビションという形でなんとか大会を盛り上げたい! と最終的には11チーム、3名の選手が様々な方法で演技披露を行い、第2回オンライン選手権は多彩なものになった。また、オンラインならではの柔軟な対応が可能だということの証明にもなったように思う。このエキシビションも含め、今大会は大成功だったと言えるのではないだろうか。

※恵庭南高校:長きにわたり恵庭南高校を率い、2015年には高校選抜大会での団体優勝に導いた名将・工藤直人監督が今年度で勇退。監督への感謝の気持ちをこめての団体演技動画、そして生放送での監督への感謝のメッセージと心温まるエキシビションだった。

※光明学園相模原高校:インターハイでも7位と健闘した今年の光明は、11月の全日本選手権出場も決まっている。このチームの持ち味ともいえる雑味のない美しい、繊細な印象の体操を余すことなく発揮した演技には心が洗われるような清潔感があった。

※京都市立紫野高校:タンブリングの強いメンバーが集まった今年の紫野高校は、出場できればインターハイでも台風の目と言われていた。府大会での演技中に怪我人が出たことによってインターハイ出場は逃したが、エキシビションで披露された演技を見る限り、「たしかにこれは強い!」と唸らせるものがあった。来年以降、もう一度、今年以上のチームを作り上げてくれること、また、今年の3年生に関してはぜひ大学や社会人で、今年のリベンジを期待したいと思わせる演技だった。

※千葉県立袖ヶ浦高校:学校の体育館では本番でのフロアと同じ大きさの演技面を使うことができず、武道場を使ったり、他校に出張練習をしたりしている袖ヶ浦高校の演技動画は、様々な場所で撮影された動画を繋いだものだった。彼らが苦労しながら日頃の練習に取り組んでいる様子が垣間見えると同時に、「それでも新体操が好き!」という思いも伝わってくる感動的な動画だった。

※芦北高校:昨年7月には豪雨災害で体育館も被災。その失意の中でオンライン選手権に参加した芦北高校は、今年のインターハイで見事4位と大躍進を遂げた。今年のオンライン選手権ではぜひ3位以内! と意気込んでいたが、活動自粛で出場ならず。インターハイ前の通し練習動画での出演となった。生放送のインタビューには岩永キャプテンが昨年とは見違えるようなたくましさで登場。「被災からの再起するエネルギー」が伝わってくる演技動画も迫力満点で、11月の全日本選手権での演技ががぜん楽しみになるものだった。

※小林秀峰高校:7人による演技動画で出演した小林秀峰高校だが、このチームは選手が1人増えても、おそらく減っても違和感がない。そのくらいチームとしての個性が際立ち、「秀峰の演技、秀峰の動き」なのだ。最盛期に比べると部員数も減少傾向にあり苦境に立たされている小林秀峰だが、この一体感はやはり古豪ならではのものだ。ここから始まる巻き返しにおおいに期待したいと思わせる演技だった。

※前橋工業高校:一時期に比べるとジュニアから力のある選手が入ってくることが減ったという前橋工業だが、それでも高校での部活でここまでになるのか! と感心するような基本に忠実な美しい演技を見せてくれた。その堅実な演技からは、彼らが高校でどれだけ夢中になって真摯に新体操に取り組んできたか、そしてこの先さらにジャンプアップできる基礎を築いてきたかが伝わってきた。

※大垣共立銀行OKB体操クラブ(済美高校):今年のインターハイ個人覇者・岩田隼を擁するチームだが、5人編制。競技であればそれだけで1.5減点されてしまうが、とても1人足りないとは思えない迫力の演技だった。個々の選手の能力の高さに加え、個人競技では強いが団体でなかなか勝てないOKBが、たとえ1人足りなくても団体に取り組んでいることからも団体競技に対する強い思いが見える気がした。

※酒田南高校:インターハイでは5人編制。今回も5人での演技動画による出演となった酒田南高校は、今年がインターハイ初出場。男子新体操の強豪が多い東北においては後発となる山形県のチームだ。ジュニアクラブも今年の4月に創設したばかりという「これから」の地域であり、チームだが、それだけに基本を大切にしていることが感じ取れる演技だった。インターハイ、オンライン選手権を足がかりにおおいなる飛躍を期待したい。

※坂出工業高校:インターハイでは大きなミスがいくつかあり、苦い思いが残っただろうチーム。練習動画での出演となった今回のエキシビションでは、ほぼミスのない演技を披露することができたがミスなく通せば「さすが」の迫力だった。このチームの特徴であるタンブリングの強さや重みのある徒手は、トップ校の一角に入っていけるだけのものがあると証明する演技だったように思う。インターハイでの悔しさが、彼らを一回り強くしてくれたならば、この先、脅威になってきそうなチームだ。

※青森山田高校:第1回オンライン選手権優勝校。今回は連覇がかかっていただけに出場辞退はどんなにか無念だったろうと思う。インターハイでも表彰台を逃しており、悔しい思いをすることが多い1年になっていたのではないか。しかし、その悔しさはこのエキシビション演技で見事に払拭できたのではないだろうか。そう思うほどのクオリティーの高い演技であり、映像だった。エキシビション演技は、その場での生演技ではなく事前に撮影した(編集も可)映像による出演だったが、その特性をもっともうまく活用していたのが青森山田高校だった。非常に高画質で編集も巧み。生演技とも、正面固定の映像とも違う魅力に満ちた演技動画で、今年の演技の良さを存分に見せつけてくれた。インターハイでは6位だった青森山田だが、やはり持っている力はそんなもんじゃない! そのことをこのエキシビションで証明してくれた。

※個人選手インターハイTOP3
●石橋知也(神埼清明高校):団体で圧倒的な力を見せるタンブリング強者だが、高校3年生になり、個人演技での表現も板についてきた。それでも、やはりタンブリングに入る瞬間の「おりゃ!(やったるぜ!)」という感じが一番の魅力!
●野村壮吾(埼玉栄高校):総合力が高く、体操、タンブリング、手具操作すべてがハイレベル。さらに演技に華があり、スター性を感じさせる選手だが、このエキシビションの演技でもその魅力は十分に伝わってきた。
●岩田隼(済美高校):じつはまだ2年生。来年はインターハイ連覇もかかってくるが、その可能性もおおいにあり! と感じさせる確実性のある演技を見せた。スリムながらその体躯は強靭でタンブリングは揺るぎなく、着地の軽さ、正確さが演技を気持ちよく見せている。

※エキシビション大トリ・青森大学団体:オンライン選手権1週間前の9月16日に行われた全日本インカレで圧巻の20連覇を達成した青森大学の団体演技も披露された。20連覇の偉業もさることながら、今年の青森大学の団体は、本当に引きどころのない演技だった。全国の高校生たちが集ったオンライン選手権の締めにふさわしい演技で、「男子新体操の理想形」を示してくれたように思う。
もちろん、男子新体操は多彩であってよいし、それぞれのチーム、個人の個性はおおいに発揮してほしい。そうであってこそ、発展もあると思う。しかし、一方で守り続けるべきもの、評価されるべきものは揺るいではならない、そして、この競技のトップであるチーム、選手にはそれを体現していてほしい。今回のエキシビションで披露された青森大学団体演技は、まさに「それ」だった。
男子新体操の新しい可能性を模索し、道を切り拓いてきたオンライン選手権の締めくくりにふさわしい、まさに神演技だったと言えるだろう。

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