スポーツ 男子新体操全国オンライン選手権 2021,09,10

【コラム】男子新体操全国オンライン選手権の生い立ちを振り返る

2020年3月2日。
世界を震撼させた新型コロナウィルスの感染拡大を受け、全国高校選抜の開催中止が決まった。2月27日には休校要請が出ており、すでに部活動も中止になっている学校が多かった中での決定だった。

高校選抜の中止は、2011年の東日本大震災のときに続いて2度目。
この中止は、高校生にとっては大きな衝撃だったが、これは序章に過ぎなかった。
続いてユース世代の大きな目標となっていた大会・全日本ユースチャンピオンシップの中止も決定。さらに、4月26日には、インターハイも史上初の中止が発表された。

新体操に懸けてきた高校生たちは、2か月足らずの間に、次々と大きな喪失感を味わうことになった。とくに3年生は、進級早々、出鼻をくじかれ、「最後の年」の目標を失ってしまい、この時点で現役引退を決めた3年生も少なくなかった。目標となる大会もなくなり、練習する環境さえもないのだから無理もない選択だった。

しかし、もともと競技人口が少なく、高校生の比重が高かった男子新体操は、この「2020年の悲劇」に対して抗い続けた。はじめは、男子新体操のOB達が立ち上がり、動画投稿によるオンライン大会や、オンライン演技会を企画し、開催した。同じスポーツでも、対戦型スポーツは、オンラインへの移行は難しいが、男子新体操のような採点型スポーツはオンラインとの相性がいい。競技会として成立させることもでき、やり方次第ではリアル大会以上の集客に繋がる可能性もある。

男子新体操では、OB達がいち早くその可能性に気づき、勇気をもって動いた。そして、それが徐々に大きなムーブメントになり、日本体操協会主催による初のオンライン大会「男子新体操オンライン選手権」の開催が、7月6日に発表されたのだ。
この決定には、日本体操協会の男子体操強化本部長の水鳥寿思氏もTwitterで期待を寄せていることをつぶやくなど、各方面から注目が集まった。

8月に動画投稿による予選を行い、9月13日には予選通過したチームによる決勝が行われた。全国の体育館をオンラインで繋ぎ、審判だけが東京に集まり、オンライン中継される各チームの演技を採点するこの大会は、全国どこからでもオンラインで視聴できた。ほとんどの選手たちにとっては初めての経験だったが、それぞれの体育館にはリアル大会さながらのピリピリとした空気が漂い、選手たちの表情からもよい緊張感が伝わってきた。スマホやパソコンでその演技を見ている視聴者も十分興奮できていた。

史上初の「男子新体操オンライン選手権」は、成功だった。

なによりも、この大会のおかげで「2020年は一つも大会に出られなかった」で、終わらずにすんだ選手が数多くいたのだから。それだけでもやった価値のある大会だった。
そして、「採点型スポーツにはオンラインという活路がある」ということを証明したことにも大きな意義があった。

2020年、多くの人が、たくさんのものを失ったこの年に、男子新体操は「オンライン」という新しい扉を開いたのだ。

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