スポーツ 男子新体操全国オンライン選手権 2021,09,18

【岡山県立井原高校】「井原を超えるのは井原」を体現し続ける向上心の権化

岡山県立井原高校

2011年のインターハイで井原高校が優勝したとき、男子新体操界は騒然となった。その優勝はただの「1番」ではなく「何者も寄せつけない圧倒的な美しさ」に裏打ちされたものだったからだ。

2005年に行われた岡山国体に向けて、当時は国体種目だった男子新体操の強化に町ぐるみで取り組み、ジュニアクラブも設立。人口4万人足らずの小さな町ながら、多くの男子新体操選手を輩出し、ジュニアでもたびたび優勝をしてきた「井原の新体操」がもはや何人も追いつけないところまで昇華したように見えたのが2011年だった。

その後も浮き沈みはありつつも、2016年、2019年にもインターハイで優勝しているが、とくにこの2019年の演技は、男子新体操界に再び大きな衝撃を与えた。もとより体操の美しさ、見るものを引き込む構成力には定評のある井原だが、2019年には男子新体操の常識を覆すほどの柔軟性を見せつけたのだ。それまでにも井原の演技では男子離れした柔軟性の見せ場はあった。が、それは特別に体の柔らかい選手がアイキャッチ的に披露するものだった。それがこの年、男子では挑むところのなかったI字バランスを全員そろってやってのけたのだ。ほとんどのチームが左右開脚で状態を前に倒す「柔軟」も、井原は床上で全員がI字バランス。「男子でもここまでやれる」ことを証明してみせた。この演技のインパクトは大きく、2019年11月の全日本選手権では青森大学以外の大学をすべて上回り準優勝を成し遂げたのだ。

2020年はコロナ禍によってインターハイは中止となり、井原の連覇もお預けになった。普通に考えれば、優勝メンバーのほとんどがいなくなる2年越しでの連覇はかなり難しい。しかし、2021年のインターハイで井原は見事、インターハイを連覇した。それも、「これを超えることはないだろう」と思われていた2019年の演技を凌駕する圧巻の演技で、だった。男子新体操においては「井原」は一種のブランドになっている。井原の演技をみんなが称賛し、あこがれる。そんな環境に死角があるとしたら「慢心」だ。ところがこのチームにも、指導者にもそれがない。

世間の評価など我関せずとばかりに、「もっとよくできる。もっと理想に近づけるはずだ」と、自分たちの演技を磨き続けられる。まるで何かにとり憑かれているかのように。

その飽くことなき向上心によって、磨き上げられた演技はまさに珠玉。今年は、オンライン選手権でもその演技を見ることができる。見逃しは厳禁だ。

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